追試の駄文置き場

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嘘日記1:恋愛っていうのは初回限定の100連ガチャみたいなものだよ

昨日の夜からどうしても野菜が食べたくなって、今日は桜新町のシズラーまで歩いて行った。

 

夏が終わって涼しい風が吹いていて、久しぶりに長く歩いたけれどあまり汗も出なかった。そういえば自分は歩くのが好きだったなぁと思い出した。

 

途中で、軽トラックに旗を立てて行商をしている人がいた。果物の販売かと思って近づくと、トラックの荷台には綺麗な瓶に入った液体がたくさん並んでおり、旗には「エーテル」と書かれていた。「うわ〜いやだな〜」と思ってそのまま通り過ぎようとすると、麦わら帽子をかぶった太ったおばあさんが「あにきぃ〜」と声をかけてきた。とうぜんそういう謎の距離感にも「うわ〜いやだな〜」と思ったので少し早足で通り過ぎた。

 

2時前にシズラーに着いたのだけれど、祝日だったので行列ができていた。順番待ちの名簿に名前を書いて入り口のベンチに座っていると、隣にいた若いカップルの男が「恋愛っていうのは初回限定の100連ガチャみたいなものだよ」と女の子に話していた。

「結局、ながい人生にとって恋愛ってのは夫婦になった後の定着性を高めるためのボーナスタイムみたいなものでしかないわけ。一時期はうわぁ楽しいなぁ嬉しいなぁって感じるんだけど、その高揚感で生涯のすべての難局を乗り切れるわけじゃない。最初に引いたSSRのキャラも数ヶ月後には平均的な位置付けのキャラクターに収まっていくんだよ」隣の女の子はふーん、みたいな感じで、けれどにこにこして男の子の話を聞いていた。女の子はびっくりするくらい綺麗な顔立ちで、逆に男の方はにきびづらで「poem❤︎」というロゴがたくさん入っているシャツを着ていてなんだか不釣り合いだなぁ、と僕は勝手に思っていた。

「でもさーあ」と女の子はかぶっていた黒いキャップをとって、髪をかきあげた。「その100連がなかったら誰もそのゲームを始めないでしょお」女の子はいたずらっぽい表情をして、男の子のほっぺに右手を伸ばして頰をぷにぷにと触った。

 

「だから恋愛が人生の全てで、実はその後の全部がまるっきり、オマケなのかもしれないじゃない?」

 

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シズラーの野菜はとても多すぎて僕は少し食べすぎてしまった。サラダバーだけで十分なのに調子に乗ってハンバーグまで頼んでしまったから(サラダバーだけの価格と500円くらいしか違わないのだ)お腹がぱんぱんだった。おいしいコーヒーを飲み干してからまた歩いて家に帰ったのだけれど、その道すがらで変な建物をみつけた。

 

https://www.city.setagaya.lg.jp/theme/kanko/002/003/001/d00006120_d/img/001.jpg

僕は恐ろしくなって走って逃げ出してしまったから、その建物がなんなのかいまだにわからないのだけれど、この建物を夢で見てしまわないように気をつけようと思った。